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接骨院の開業融資を徹底解説|9割が利用する日本政策金融公庫のポイントと注意点

接骨院の開業融資を徹底解説|9割が利用する日本政策金融公庫のポイントと注意点

接骨院を開業する際に、最も多くの先生が悩むのが「融資」の部分です。
「どこから借りるのが良いのか?」「自己資金はいくら必要?」「審査は厳しいの?」
こうした疑問を持つ方はとても多いです。

本記事では、これから開業を目指す先生向けに、日本政策金融公庫を中心とした融資の仕組み・流れ・審査ポイントをわかりやすくまとめました。


開業に必要な資金の目安

まず、接骨院を開業する際に必要となる資金は、一般的に800万円から1500万円程度が目安です。
この金額には、以下のような費用が含まれます。

  • 内装工事費(壁紙(クロス)・床・受付カウンター・エアコン・配線・トイレ・カーテンなど)

  • 物件取得費(家賃・保証金)

  • 医療機器の導入費用

  • 広告宣伝費(ホームページ制作費・オープンチラシ)

  • 開業準備中の生活費・運転資金

内装・看板代・物件取得費や医療機器の台数によって差はありますが、1000万円前後を想定しておくと現実的です。


自己資金はどのくらい必要?

融資を受ける際、自己資金がどれだけあるかは重要なポイントです。
接骨院の開業では、100万円〜200万円程度の自己資金を準備しているケースが多く見られます。

ただし、「貯金だけ」ではなく、次のような形でも自己資金とみなされる場合があります。

  • 家族や親からの支援金(援助金)

  • 定期預金や奥様の口座も含めた貯蓄実績

  • 開業準備で支払った領収書(自己負担分)

特に親からの援助は珍しくありません。金融機関もその点は理解しており、きちんと資金の流れを説明できれば問題ないことがほとんどです。


融資の選択肢|銀行か日本政策金融公庫か?

接骨院の開業融資には主に「銀行融資」と「日本政策金融公庫(通称:公庫)」の2つの選択肢があります。
しかし、実際のところ9割以上の先生が公庫を利用しています。

銀行融資の特徴

  • 審査が厳しく、開業前は実績がないため通りにくい

  • 保証協会を通す必要があり、手続きが煩雑

  • 担保や保証人を求められるケースが多い

日本政策金融公庫の特徴

  • 創業支援に特化しており、開業前の事業にも融資可能

  • 実績がなくても「創業計画書」で評価される

  • 低金利・長期返済が可能

  • 返済は半年後からスタートすることもできる

特に初めて開業する場合、公庫の方が圧倒的に現実的です。
接骨院開業支援を行っている私たちのサポートでも、ほとんどの先生が公庫からの融資でスタートしています。


融資を受けるまでの流れ

公庫で融資を受ける場合の一般的な流れは以下の通りです。

  1. 開業計画の作成(創業計画書)

  2. 必要書類の準備(免許証・見積書・賃貸契約書など)

  3. 公庫への申込み(WEBまたは窓口)

  4. 面談(約60〜90分程度)

  5. 審査・結果通知(1〜2週間程度)

  6. 融資実行

このうち最も大切なのは略歴と自己資金です。
日本政策金融公庫では、勤務年数が6年以上あると、プロとしての実績があると見てもらえる傾向があります。そのため、6年以上の経験があると安心です。
勤務実績が短いと、経営者としての経験が浅いと判断されることもあるため、可能であれば6年以上の勤務歴を目指しましょう。
日本政策金融公庫は、過去を見ます。ご自身が開業しよう!と思って、
どれくらい準備してお金を貯めてきたか?というのが通帳に表れます
しっかりと堅実に貯めていきましょう。


お持ちいただく資料(提出書類)

面談の際には、以下の資料を持参する必要があります。

① 創業計画書(売り上げ、売上原価、経費計算に用いた資料)
② 源泉徴収票(直近分)
③ 預金通帳(普通、定期、積み立てなど。ご家族名義分も含む)
④公共料金や借入金などの支払いの明細書
⑤創業のために使った資金の領収書
⑥物件を取得するための不動産の賃貸契約書または、お見積もり
⑦柔道整復師の免許証(登録証)
⑧運転免許証

これらは、融資担当者が「どのように数字を出したか」「資金の流れは明確か」を確認するために重要な書類です。
数字に根拠があるかどうかで、審査の印象は大きく変わります。


面談で聞かれる主な質問

面談では、担当者が以下のような質問を行います。

  • なぜこの地域で開業しようと思ったのか?

  • 想定する患者層と集客方法は?

  • 家族は応援してくれているか?

  • 今の院を退職して問題はないか?(前職とトラブルにならないか?)

このとき、漠然とした答えではなく、明確な根拠を示すことが重要です。
たとえば「1日20人来院で月商100万円を目指します」と言うだけでなく、
「競合数・施術単価」など在職時の院のデータをもとに説明すると説得力が高まります。


失敗しないためのポイント

  1. 見積書を集めて、根拠のある金額を出す

  2. 自己資金の入出金履歴を明確にしておく

  3. 創業計画書は“夢”ではなく“現実的な数字”で書く

  4. 面談での印象を大切にする(言葉遣い・服装(特に爪やクツはきちんとしておきましょう))

融資担当者は、単に「貸すかどうか」だけでなく、長期的に返していけるかを見ています。
そのため、「誠実さ」と「現実的な計画性」を伝えることが成功への近道です。


専門家のサポートを受けるのも有効

融資の書類作成や計画書のまとめ方に不安がある場合は、日本政策金融公庫や地域の商工会議所などに事前に相談するのも有効です。
また、開業支援会社や中小企業診断士といった専門家に依頼することで、より具体的なアドバイスを受けることもできます。

当社では、開業支援の中で「資金・集客・医療機器」までトータルでサポートしています。
必要に応じて、専門家との連携も可能です。


まとめ|融資は「準備」で9割が決まる

接骨院の開業において、融資は避けて通れないステップです。
特に日本政策金融公庫は、多くの先生にとって最も現実的な選択肢です。

しっかりとした準備と計画を行えば、開業は決して難しくありません。
焦らず、ひとつずつ進めていきましょう。


執筆者
株式会社リードメディカル 山崎紀之
接骨院・整骨院の開業支援を全国で行う。
集客・医療機器・融資で、トータルでサポートしています。

「開業資金、あともう少し抑えられないかな…」
そんな院長予定のみなさんへ。2025年に利用できる助成金・補助金をまとめました。設備投資、人材採用、IT導入など目的別に整理しているので、読み終わるころには“今すぐチェックすべき制度”がはっきりします。

  1. 助成金と補助金の違い
  2. 接骨院開業で使える主な助成金・補助金
  3. 助成金を勝ち取る3つのコツ
  4. 助成金+融資で資金繰りを安定化
  5. リードメディカルの開業支援
  6. よくある質問
  7. まとめ

助成金と補助金の違いを整理しよう

助成金と補助金はどちらも“返さなくていいお金”ですが、目的と採択プロセスが異なります。

項目 助成金 補助金
主な目的 雇用・人材支援 設備・事業支援
公募時期 通年募集が多い 期間限定(年1〜2回)
審査 基準を満たせば原則支給 競争・選考あり
返済 いずれも不要

補助金は“書類と採点勝負”になるため、戦略的な申請準備が欠かせません。

接骨院開業で使える主な助成金・補助金

1. 小規模事業者持続化補助金

  • 対象:個人事業主・法人問わず
  • 用途:広告宣伝、内装、ホームページ制作 など
  • 補助額:上限50万〜200万円

院のロゴやチラシ作成費、予約サイト構築費など“集客”に紐づく投資と相性◎。

2. ものづくり補助金

  • 対象:革新的サービスを導入する中小企業
  • 用途:医療機器・ITシステム購入 など
  • 補助額:最大1,000万円

最新の超音波画像診断装置や予約自動化システム導入時におすすめ。

3. キャリアアップ助成金(雇用関連)

  • 対象:有期雇用スタッフを正社員化する事業主
  • 補助額:1人あたり数十万円

受付スタッフや施術補助者のキャリアパス設計と同時に活用すると効果的です。

4. 自治体独自の創業助成金

東京都・千葉県・大阪府など、毎年条件が変わります。最新情報は商工会議所サイトを必ず確認しましょう。

助成金を上手に活用する3つのコツ

  1. 早めに情報収集 – 公募開始前からチェックが吉
  2. 事業計画書を作り込む – “数字で語る”と採択率UP
  3. 専門家に相談 – 行政書士・中小企業診断士を活用

助成金+融資で安定した開業資金を

助成金だけで賄うのは難しいため、日本政策金融公庫の創業融資とセットで考えるのが王道です。

リードメディカルの開業支援

物件選定・医療機器手配・融資サポートまでワンストップ。助成金の書類作成もサポート実績多数です。

接骨院開業支援サービスを見る

よくある質問

自己資金ゼロでも申請できますか?
複数の制度を同時に受け取れますか?

まとめ

開業資金を抑える最大のポイントは「制度を知り、期限内に動く」こと。チャンスは多いので、まずは自院で使える助成金・補助金をピックアップし、早速準備を始めましょう。


この記事を書いた人
株式会社リードメディカル 山崎紀之
接骨院・整骨院の開業支援を全国で行い、物件・機器・融資までトータルサポートしています。

接骨院開業、何から始める?

「接骨院を開業したいけれど、何から手をつければいいのか分からない」
そんな声をよく耳にします。

実際のところ、開業は「資格がある」だけではできません。
物件選び、資金調達、医療機器、保健所への開設届…と、やるべきことは山ほどあります。

この記事では、接骨院の開業支援を受けるとどう違うのか? を中心に、開業準備の流れをわかりやすくまとめました。


開業支援を受けるメリット

接骨院の開業には、経験と専門知識が必要です。
自己流で進めると、時間もコストも想定以上にかかってしまうことがあります。

一方で、開業支援を利用すれば「最短・最適ルート」で開業できるのが最大のメリットです。

弊社サポート

  • 融資申請のサポート(元日本政策金融公庫の融資担当の方のアドバイス)

  • 物件の確認(google mapで送っていただきアドバイス)

  • 設備・医療機器の導入相談(開業、約半年前に体験会を行います)

  • 開業後の集客・経営サポート(売り上げ70万円までは毎月zoomミーティングを行います)

専門のサポートを受けることで、開業リスクを大幅に減らせます。


開業資金はいくら必要?

接骨院の開業には、平均で500万〜1,500万円程度の資金が必要と言われています。

では、いくら自己資金で持っていれば良いのでしょうか?
おおよそ100万円から200万円が一般的です。
足りない分は日本政策金融公庫からの借り入れとなります。
おおくの先生方は500万円から700万円くらいを借り入れします。

また医療機器はリースが一般的ですので、
500万円から700万円くらいをリースしていきます。

主な内訳は以下の通りです:

  • テナント初期費用(敷金・礼金など)

  • ベッド・医療機器・備品

  • 内装・看板・広告費

  • 開業前の運転資金

👉 詳しくはこちらの記事も参考に:
接骨院を開業するにはどれだけ資金が必要?リアルな金額と準備ステップ


開設届と開業届、混同していませんか?

意外と多いのが、**「開設届」と「開業届」の勘違い」です。

  • 開業届:税務署に提出(税務上の手続き)

  • 開設届:保健所に提出(施術所としての許可)

どちらも必要ですが、提出先と目的が異なります。
この2つを正しく理解しておくことが、スムーズな開業の第一歩です。

👉 関連記事:
接骨院を開設するには「開設届」が必要?開業届との違いと提出の流れを解説


医療機器の選び方

開業時に悩むのが「どの医療機器を入れるか」。
機器の選び方ひとつで、施術の幅や患者満足度が大きく変わります。

開業支援では、デモ体験を通じて最適な機器選定ができるのも大きな強みです。


株式会社リードメディカルの開業支援とは

株式会社リードメディカルでは、
「集客 × 機器 × 融資」 の3つを軸に、全国で接骨院・整骨院の開業をサポートしています。

「開業しても患者さんが本当に来るか?」
「融資の通し方が不安」
「医療機器の見積もりを比較したい」

そんな段階からでも、トータルで支援可能です。

👉 詳しくはこちらから
小冊子 無料プレゼント


まとめ

接骨院の開業を成功させるには、計画的な準備と信頼できるサポートが欠かせません。
専門家の支援を活用することで、失敗を防ぎ、開業後の安定経営へとつなげられます。

接骨院を開業しようとするときに、よく出てくる言葉が「開業届」と「開設届」。
名前が似ているため、同じ書類だと思っている方も少なくありません。

ですが、実はこの2つ――提出先も目的もまったく違う書類なんです。

この記事では、接骨院を開設する際に必要な「開設届」と「開業届」の違い、
それぞれの提出先、必要な書類、注意点までをわかりやすく紹介します。


✅接骨院の「開設届」とは?どこに出すの?

接骨院の「開設届」とは、
柔道整復師が施術所を開くときに、保健所へ提出する届出書です。

これは、治療を行う場所としての安全性や設備の基準を確認するための手続きで、
提出先は開設する地域を管轄する保健所になります。

営業を始める前に提出し、保健所による確認や立入検査を経て、
「施術所開設届出済証」が交付されてから、正式に開業できます。


💡開設届と開業届の違い

よく混同されるのが「開業届」ですが、この2つは別のものです。

書類名 提出先 目的 タイミング
開設届 保健所 治療施設としての届け出 開業前
開業届 税務署 個人事業主としての届け出 開業後1か月以内

つまり、
「治療を行うための届出(保健所)」と「事業を始めるための届出(税務署)」は、
それぞれ別ルートで必要ということです。

特に、保険請求(療養費の受領委任)を行う接骨院では、
開設届がなければ保険の取り扱いができません。注意が必要です。


📋開設届に必要な書類

保健所へ提出する際は、いくつかの添付資料が求められます。
地域によって多少異なりますが、一般的には以下のような書類を準備します。

  • 柔道整復師免許証の写し

  • 施術所の平面図(寸法入り)

  • 建物の登記簿謄本または賃貸契約書

  • 医療機器・備品の一覧

  • 開設者の身分証明書(運転免許証・住民票など)

  • 消防署の確認書類(必要な場合)

書類提出後、保健所の立入検査を経て、問題がなければ受理されます。


🕒開設届の提出タイミングと注意点

開設届は開設後10日以内に申請のが原則です。

審査から立入検査、証明書発行までに数日〜1週間程度かかることが多いため、
開業スケジュールを立てるときは、この期間も計算に入れておきましょう。

また、内装工事を始める前に保健所へ相談するのもおすすめです。
施術スペースや待合室、手洗い設備などが基準を満たしていないと、
やり直し工事になるケースも少なくありません。


🧾開設届を出した後に必要な手続き

保健所への開設届が済んだら、以下の手続きも忘れずに行いましょう。

  1. 地方厚生局へ「受領委任の届出」(保険請求を行う場合)

  2. 税務署へ「開業届」(事業主登録)

    整骨院を開業したら1ヶ月以内に、納税をする地域(税務署)に「個人事業の開業届出・廃業届出等手続」を
    提出しなければなりません。

    インターネットで開業届を作れますので、
    こちらを参考に作ってみてください。
    開業freee

    簡単な質問に答えるだけで、無料で作れます。
    ただし、開業前から準備して作ろうと思ったら
    屋号(院名)が必要になりますので、屋号が決まってから、
    作成しましょう!

    同時に青色申告承認申請書も同時に作れますので、
    作っておきましょう!

    こちらは、住居がある地域、または施術所がある地域を選べますが
    ほとんどの先生方が住居がある地域に提出されます。

  3. 青色申告承認申請書の提出(節税対策)

この3つを済ませることで、
「治療ができる」「保険が使える」「経営ができる」
という3つの基盤が整います。


🩹まとめ

接骨院を開くためには、

  • 保健所へ「開設届」

  • 税務署へ「開業届」
    の両方を提出する必要があります。

似たような言葉ですが、目的も提出先も違います。

どちらか一方を忘れてしまうと、
保険請求ができなかったり、税務上のトラブルにつながったりするため、
正しい順番で確実に手続きを進めることが大切です。

「そろそろ自分の院を持ちたい」──そう思い始めた瞬間にまず突き当たるのが資金の壁です。
私はこれまで200院以上の立ち上げをサポートしてきましたが、やはり“数字”を知らずに計画を進めると、
途中で動けなくなる先生が少なくありません。この記事では、実際の開業資金の目安と資金調達の流れを、
現場の肌感覚も交えてお伝えします。

【1】開業資金の目安を押さえる
・相場:400万〜1,500万円
・「初期投資+運転資金3〜6か月分」で見ると650万〜1,750万円
・居抜き&機器最小なら500万前後で済むケースも

【2】費用を左右する4つの主要項目
1)物件取得費(敷金・礼金・保証金など)
2)内外装・電気配線・衛生設備
3)治療機器・レセコン・什器備品
4)広告宣伝費+開業後の運転資金

私は18坪テナントの新規内装を請け負った際、内装+設備だけで720万円かかりました。
逆に、知人が譲渡した居抜き物件では300万円弱でスタートできた例もあります。
同じ「18坪」でもここまで差が出るのがポイントです。

【3】3つのモデルケースでシミュレーション
A.最小スモールスタート 400〜800万円
 ベッド2台/ワンオペ/中古機器中心

B.標準モデル 600〜1,200万円
 ベッド4台/テナント内装フル/物療器機

C.ハイグレードモデル 1,000万円超
 自費メニュー充実/最新機器/スタッフ複数

【4】資金調達のリアル
・日本政策金融公庫―無担保800万円、金利1%台の枠を活用
・地方自治体の創業助成金―開業後の家賃・設備の1/2を補助
・自己資金は総額の20〜30%用意できると融資審査がスムーズ(ほとんどの先生が100万~200万)

私の場合、自己資金300万円+公庫融資700万円で開業した先生は、初月黒字化まで4か月でした。
運転資金3か月分を口座に残しておいたことが奏功しました。

【5】よくある落とし穴と対策
・広告費ゼロで見込み客が来ない → 立ち上げ3か月はSNS広告+ポスティングをセット
・高額機器をフルローン → リース期間と償却年数を必ず突き合わせる
・家賃負担が高い → 売上の15%以内を目安に抑える

【6】開業前チェックリスト(保存版)
□ 物件候補は3件以上比較したか
□ 自己資金=総投資額の30%を確保したか
□ 運転資金3か月分が口座にあるか
□ 日本政策金融公庫の創業計画書をダウンロードしたか

(まとめ)
開業資金は「高い」よりも「内訳が見えない」ことが不安の正体です。
まずは数字を洗い出し、資金調達の選択肢を並べ、運転資金まで含めた計画表を作成しましょう。
数字がクリアになった瞬間、開業への道筋が一気に具体的に見えてきます。

接骨院の開業を目指している柔道整復師の先生から、「国家資格を取ったらすぐに開業できますか?」という質問をよくいただきます。

結論からお伝えすると、柔道整復師の免許だけでは、保険適用の接骨院は開業できません

実は、免許取得後にも満たすべき要件がいくつかあるのです。

私自身、開業準備中に「こんな要件があったのか」と驚いた経験があります。

この記事では、これから開業を考えている先生方が同じ失敗をしないよう、

必要な資格・実務経験・届出について、実務に即した形で詳しく解説していきます。

接骨院開業の大前提:柔道整復師の国家資格

柔道整復師とは

接骨院(整骨院)を開業するには、柔道整復師という国家資格が絶対条件です。この資格がなければ、骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷といった施術を業として行うことはできません。

資格取得までの道のり

柔道整復師になるためには、次のステップを踏む必要があります:

  1. 養成施設での学習(3〜4年)

    • 文部科学大臣指定の4年制大学
    • 都道府県知事指定の専門学校(3年以上)
  2. 国家試験の合格

    • 毎年3月に実施
    • 合格率は近年60〜70%程度
  3. 免許の登録

    • 試験合格後、厚生労働省への登録手続きが必要

ここまでは多くの先生がご存知だと思います。しかし、問題はここからです。

保険診療を行うための「施術管理者」要件

接骨院を開業しても、保険適用の施術を行えなければ、経営は非常に厳しいのが現実です。保険診療を行うには、「施術管理者」としての要件を満たす必要があります。

2018年の制度改正が大きな転換点

平成30年(2018年)4月の制度改正により、施術管理者になるための要件が大幅に厳格化されました。それ以前は免許取得後すぐに開業できましたが、現在は違います。

必要な実務経験年数

2024年4月以降に施術管理者になる場合:

  • 実務経験3年以上が必須

つまり、国家資格を取得してから最低でも3年間は、他の接骨院や整骨院,
もしくは整形外科で勤務する必要があります。「来年すぐに開業しよう」と考えていた新卒の先生には、少し厳しい現実かもしれません。

施術管理者研修の受講

実務経験だけでは不十分で、施術管理者研修(16時間以上)の受講と修了が義務付けられています。

研修の内容:

  • 療養費の適正請求
  • 接骨院の運営管理
  • 関係法規の理解
  • 職業倫理

この研修は、各都道府県の柔道整復師会などが実施しています。修了証がないと、保険請求の受領委任契約ができません。

開業時に必要な届出と手続き

資格と経験を満たしても、行政手続きを怠ると営業できません。

1. 保健所への開設届

提出先: 施術所所在地を管轄する保健所
期限: 開設後10日以内
必要書類:

  • 施術所開設届
  • 施術所の平面図
  • 柔道整復師免許証の写し
  • 賃貸借契約書の写し(賃貸の場合)

構造設備基準も確認が必要です:

  • 施術室の面積(6.6㎡以上)
  • 待合室の設置
  • 消毒設備

2. 受領委任契約の申請

提出先: 地方厚生局
必要なもの:

  • 受領委任の取扱いに関する申出書
  • 施術管理者の実務経験証明書
  • 施術管理者研修修了証の写し
  • 開設届出済証明書

この契約がないと、患者さんから療養費の一部負担金だけを受け取ることができません。

3. その他の届出

税務署:

  • 個人事業の開業届
  • 青色申告承認申請書(節税のため推奨)

都道府県税事務所:

  • 個人事業税の開業届

年金事務所(従業員を雇う場合):

  • 社会保険の新規適用届

開業までの現実的なスケジュール

実際のタイムラインを見てみましょう。

国家資格取得: 2022年3月(24歳)

実務経験開始: 2022年4月〜

  • 接骨院に勤務
  • 施術技術を磨く
  • 経営の実態を学ぶ

    施術管理者研修受講: 2025年1月(実務3年目)

    実務経験満了: 2025年3月(3年経過)

    開業準備本格化: 2025年4月〜
  • 物件探し
  • 事業計画作成
  • 資金調達

    開業: 2025年10月(27歳)

このように、国家資格取得から開業まで最短でも3年半程度かかります。

開業準備でよくある失敗と対策

失敗例1:実務経験のカウントミス

「だいたい、1~2年働いた・・・」

で、計算される方がいます。

実際に勤務した期間を把握しましょう!

また実務経験証明書を発行してもらえるか雇用主と相談しておくことが必用です。

対策: 実務経験が2年半を過ぎたあたりで、早めに研修スケジュールを確認し、予約を入れる。

失敗例3:物件の構造基準を満たしていない

気に入った物件を契約した後で、施術室の面積が基準を満たしていないことが判明したケースです。

対策: 物件契約前に、保健所に必ず相談に行く。図面を持参して、開設可能か事前確認する。

自費診療のみで開業する選択肢

「3年も待てない」という先生もいるかもしれません。その場合、自費診療のみの施術所として開業する道もあります。

メリット

  • 実務経験不要で開業可能
  • 施術内容の自由度が高い
  • 保険請求の事務負担がない

デメリット

  • 患者さんの負担が大きい
  • 集客の難易度が高い
  • 安定した収益を得るまで時間がかかる

ただし、実務経験の年数の加算にはならないので、注意しましょう!

開業成功のために準備すべきこと

資格と要件をクリアしたら、次は実際の開業準備です。

1. 技術力の向上

実務経験の3年間は、ただ時間を過ごすのではなく、施術技術を徹底的に磨く期間と捉えてください。

  • 様々な症状の患者さんを経験する
  • 先輩の施術を観察して学ぶ
  • 研修会やセミナーに参加する
  • 患者さんとのコミュニケーション力を磨く

2. 経営知識の習得

施術ができても、経営ができなければ開業は成功しません。

  • 勤務先の経営手法を観察する
  • 会計・税務の基礎知識を学ぶ
  • マーケティングの勉強をする
  • 開業セミナーに参加する

3. 資金計画

開業には600万〜1000万円程度の初期投資が必要です。

現実的には自己資金100万円、それ以外は日本政策金融公庫から借り入れをします。

主な費用:

  • 物件取得費(敷金・礼金・保証金)
  • 内装工事費
  • 医療機器・備品購入費
  • 広告宣伝費
  • 運転資金(4ヶ月分程度)

実務経験の期間中に、計画的に開業資金を貯めることをお勧めします。

4. 差別化戦略の構築

近年、接骨院の競争は激化しています。「なぜあなたの接骨院を選ぶべきか」を明確にしましょう。

  • 特定の症状に特化する(スポーツ障害、交通事故、産後ケアなど)
  • 独自の施術メソッドを確立する
  • ターゲット患者層を明確にする

まとめ:計画的な準備が成功への近道

接骨院の開業に必要な資格と要件をまとめると:

 柔道整復師の国家資格(必須)
 3年以上の実務経験(保険診療を行う場合)
 施術管理者研修の修了(保険診療を行う場合)
 各種行政手続き(開設届、受領委任契約など)

「免許を取ったらすぐ開業」というイメージを持っていた先生には、ハードルが高く感じられるかもしれません。

しかし、この3年間の実務経験期間こそが、開業後の成功を左右する重要な準備期間なのです。

焦らず、一つひとつの要件を確実にクリアしながら、技術・経営知識・資金を蓄積していく。

そうすれば、開業後も患者さんに信頼される接骨院を運営できるはずです。

今日から、具体的な開業計画を立て始めてみませんか?