接骨院を開業しようと考えたとき、多くの方が最初に悩むのが「保健所への手続きは何をすればいいのか」という点です。「接骨院 開業 保健所」と検索されている方の多くは、開設届が必要なのか、どのタイミングで行うのか、何から手を付ければ良いのか分からず不安を感じているのではないでしょうか。
結論からお伝えすると、接骨院を開業する際には保健所への届出は必須です。ただし、それだけでは不十分で、院名の取り扱いについても保健所への事前確認が非常に重要になります。この点を軽視すると、開業直前で院名変更を求められるケースもあります。
この記事では、接骨院・整骨院の開業支援の現場で実際に起こっている事例をもとに、保健所手続きと院名の考え方まで詳しく解説していきます。
接骨院開業と保健所の関係性
接骨院(柔道整復施術所)を開業する場合、開設後10日以内に保健所へ開設届を提出する義務があります。これは柔道整復師法に基づく正式なルールで、開業するすべての柔道整復師が対象となります。
しかし実際には「保健所はあとでいいだろう」「内装が完成してから相談しよう」と考える方も少なくありません。その結果、開業日がずれる、広告物を作り直すといったトラブルにつながるケースが発生しています。
施術所開設届と同じくらい重要な「院名の確認」
多くの方が見落としがちなのが、院名についての事前相談です。特に「鍼灸接骨院」「〇〇鍼灸接骨院」という名称を使いたい場合、保健所から以下のような指示が出るケースがあります。
「接骨部門と鍼灸部門は別の施術所として扱うため、〇〇接骨院と〇〇鍼灸院に名称を分けてください」
この指示は全国どこでも必ず出るものではありませんが、地域によっては非常に厳格に運用されており、開設届の段階で修正を求められることがあります。
そのため、院名を決めたら必ず保健所へ相談し、使用可能かどうかを事前に確認することが重要です。
院名確認を怠った場合に起こりやすいトラブル
現場で実際にあった事例として、次のようなケースがあります。
看板やホームページをすでに制作済みだった
チラシを印刷した後に院名変更を指示された
SNSのアカウント名をすべて変更することになった
これらはすべて余計な費用と時間がかかる原因になります。だからこそ「院名は後で考えればいい」ではなく、開業準備の初期段階で保健所に相談することが重要なのです。
接骨院開業時に必要な保健所提出書類
地域差はありますが、一般的には以下の書類が必要になります。
施術所開設届
柔道整復師免許証(原本・写し)
施術所の平面図
周辺地図(最寄駅からのルート地図)
賃貸借契約書の写し
法人の場合は登記簿謄本
特に平面図は寸法の誤りや記載漏れがあると差し戻しになることが多いため、慎重に準備する必要があります。
保健所への相談は「事前」が最重要
保健所とのやり取りで一番大切なのは「開業後に届出」ではなく「開業前に相談」することです。
内装工事前に図面を持参して相談するだけでも、後から指摘を受けるリスクを大幅に下げられます。院名についても、このタイミングで確認しておくのが理想です。
受領委任手続きとの関係
保健所の開設届が完了すると、次に必要になるのが受領委任に関する手続きです。これは健康保険を扱うために必須のステップで、地方厚生局などへの申請が必要になります。
この申請でも、保健所から受理された開設届の控えが必要になるため、保健所手続きを後回しにすると全体のスケジュールが崩れてしまいます。
まとめ
接骨院の開業において、保健所への届出は避けて通れません。それに加えて、院名についても必ず事前相談を行うことが、スムーズな開業への近道となります。
特に「〇〇鍼灸接骨院」という名称を使いたい場合は、「〇〇接骨院」「〇〇鍼灸院」に分けるよう指示されるケースがあるため、看板やホームページを作る前に必ず保健所へ確認を取りましょう。
開業準備は勢いで進めてしまうと、後戻りのコストが大きくなります。正しい順序で、確実に進めていくことが、長く安定した経営につながります。
執筆者:株式会社リードメディカル 山崎紀之
肩書き:接骨院・整骨院の開業支援を全国で行う。集客・医療機器・融資で、トータルでサポートしています。
接骨院・整骨院を開業しようと考えたときに、多くの方が検索するのが「接骨院 開業 補助金」というキーワードです。返済不要の資金で開業できるのであれば、不安も軽くなります。しかし実際には、補助金は誰でも簡単にもらえるお金ではなく、使い方を間違えると時間と労力だけを消耗してしまうケースも少なくありません。
私は、全国の接骨院・整骨院の開業をサポートしてきました。その現場経験をもとに、補助金の実情と、使うべきかどうかの現実的な判断基準をお伝えします。
接骨院の開業で補助金は本当に使えるのか?
結論からお伝えすると、接骨院の開業でも補助金を使える可能性は十分にあります。ただし、資格があるから、医療に関わる仕事だからという理由で自動的に通る制度ではありません。
補助金は、事業の内容、将来性、地域性、事業計画の完成度などをもとに審査されます。そのため、同じ接骨院開業でも、通る人と通らない人がはっきり分かれます。
接骨院開業で代表的な補助金制度
接骨院の開業時に検討される制度として、最も有名なのが小規模事業者持続化補助金です。この制度は、広告費や販促費に使いやすいのが特徴です。
チラシ制作、ホームページ作成、看板設置、広告出稿費用などが対象になることが多く、これから集客を本格化させたい開業初期と相性が良い制度です。
地域ごとに存在するスタートアップ系補助金
国の補助金とは別に、都道府県や市区町村が独自に用意しているスタートアップ系の補助金もあります。
これらは地域により名称が異なり、創業支援補助金や起業支援補助金などの名前で実施されているケースがあります。内容によっては、内装費、設備費、家賃の一部が対象になることもあります。
こうした情報はインターネット検索だけでは見つけにくいため、地域の商工会議所や商工会に直接相談するのが有効です。
補助金申請にかかる現実的なコスト
多くの方が見落としがちなのが、補助金申請にかかるコストです。申請は自力でも可能ですが、実務的には中小企業診断士や行政書士に依頼するケースが少なくありません。
その費用相場は、おおよそ10万円から15万円程度です。成功報酬とは別に、着手金として発生する場合もあります。
少額の補助金でも本当に意味はあるのか
補助金額が少額だった場合、本当に労力に見合うかどうかを冷静に判断する必要があります。
たとえば、20万円の補助金を受け取るために、15万円の専門家費用が必要であれば、実質的なメリットはごくわずかになります。準備にかかる時間やストレスも含めると、必ずしも得になるとは限りません。
補助金は「もらえるから申請する」のではなく、「費用対効果が合うか」で判断することが重要です。
接骨院開業に補助金活用が向いている人
補助金の活用が向いているのは、開業資金に不安があり、できるだけ自己資金を温存したい人です。また、計画書の作成や数字の管理に前向きに取り組める人にも向いています。
一方で、スピードを重視したい人や、書類作成に強いストレスを感じる人は、補助金にこだわらず融資中心で進めた方がスムーズな場合もあります。
商工会議所は無料で使える重要な相談先
地域の商工会議所や商工会は、補助金に関する情報収集に非常に役立つ窓口です。現在募集している補助金、地域独自の制度、申請の注意点などを無料で教えてくれるケースが多くあります。
インターネット検索だけに頼らず、実際に相談に行くことで、自分の地域に合った制度を具体的に把握しやすくなります。
補助金に過度な期待をしないことが成功の近道
補助金は返済不要という大きな魅力がありますが、開業に必要な資金をすべてまかなえるわけではありません。現実的には、自己資金や融資と組み合わせて考えるのが一般的です。
資金調達の優先順位としては、自己資金、融資、補助金の順に考えることで、無理のない開業計画を立てやすくなります。
まとめ
接骨院の開業における補助金は、上手に活用すれば大きな助けになりますが、全員にとって最適な手段とは限りません。費用対効果を冷静に見極め、自分の状況に合った選択をすることが、後悔のない開業につながります。
執筆者:株式会社リードメディカル 山崎紀之
接骨院・整骨院の開業支援を全国で行う。集客・医療機器・融資で、トータルでサポートしています。
「整骨院を開業したい。でも、自己資金がほぼない。」
この相談は、私が全国で開業支援をしてきた中で、最も多いテーマのひとつです。
「整骨院 開業 資金ゼロ」
「整骨院 開業 広さ」
「整骨院 開業 何坪」
こうしたキーワードで検索し、不安を抱えながらこの記事にたどり着いた方も多いのではないでしょうか。
結論からお伝えします。
“完全に資金ゼロ”で整骨院を開業することは、現実的にはほぼ不可能です。
ただし、
「自己資金がない=開業できない」ではありません。
私はこれまで多くの先生方の開業支援に関わってきましたが、貯金がほとんどない状態からスタートし、開業を実現してきたケースも数多く存在します。
この記事では、現場の実態をもとに
・資金ゼロの現実
・初期費用の内訳
・12坪・15坪のリアル
・親の援助の考え方
・クラウドファンディングの活用
・自宅開業という選択肢
まで、包み隠さずお伝えします。
整骨院を開業するのに本当に必要なお金とは?
まず「いくらくらい必要なのか」を把握することが大切です。
一般的な整骨院開業で発生する費用は以下の通りです。
・物件取得費(保証金・礼金・仲介手数料)
・内装工事費(床・壁・電気・配管など)
・医療機器(ベッド、電気治療器、温め機器など)
・受付什器(デスク、椅子、収納)
・広告費(ホームページ、チラシ、看板)
・運転資金(最低でも3ヶ月分の生活費・家賃)
これらを合計すると、一般的には300万〜800万円程度が相場になります。
だからこそ、「完全な資金ゼロ」は難しいと言われます。
資金がない先生ほど「広さ」の選択が重要になる理由
資金が潤沢にある場合は、ある程度広い物件を選ぶことができます。
しかし資金ゼロに近い場合は、
広さ=固定費=生存確率に直結します。
12坪という選択肢|最小サイズで最大効率
資金が少ない先生にとって、もっとも現実的なのが12坪前後というサイズです。
12坪の典型的な構成
・施術ベッド2床
・小さな受付カウンター
・最低限の待合スペース
・スタッフルームなし
完全に1人治療院専用モデルになります。
このサイズでは以下のことが難しくなります。
・学生向けの集団運動療法
・アスレチックリハビリ
・チーム単位のトレーニング
そのため、狙うべき方向性は明確になります。
**「数をこなす保険施術」ではなく「単価の高い自費施術」**です。
15坪という選択は「スタッフを入れるか否か」で決める
「広い方が売上が伸びる」という発想は、多くの先生が持っています。
ただ、現場支援の現実はこうです。
物件の広さは、売上計画ではなく人員計画で決めるべきです。
市街地では15坪クラスの物件は非常に少なく、
実質的な選択肢は15坪前後になります。
15坪で可能になることは以下の通りです。
・ベッド3~4床
・受付をスタッフに任せられる
・最小限のリハビリスペース確保
将来的に
・受付スタッフを雇いたい
・施術補助スタッフを入れたい
そう考えているなら、20坪は非常に現実的なサイズです。
親の援助は「甘え」ではなく現実的な経営判断
開業資金が足りない場合、親の援助は珍しい選択ではありません。
実際の支援現場でも、
・親から一部資金を借りる
・頭金だけ用意してもらう
・保証人になってもらう
こうしたケースは非常に多く存在します。
ポイントは以下の3つです。
・贈与か借入かを明確にする
・借用書を必ず作る
・返済計画を数字で共有する
感情ではなく「契約」として整理すれば、親の援助は非常に強力な選択肢になります。
クラウドファンディングは資金調達+集客の同時スタートが可能
最近増えているのがクラウドファンディング型の開業支援です。
クラウドファンディングの強みは、
「お金を集める」こと以上に
開業前から見込み患者を作れることです。
相性が良いテーマ例:
・地域の高齢者の健康寿命支援
・成長期の学生アスリートのケア
・産後ママの体調回復サポート
これらは“共感”が集まりやすく、支援と同時に口コミも広がります。
自宅開業は資金ゼロにもっとも近づけるモデル
資金に余裕がない先生にとって、非常に相性が良いのが自宅併設型の整骨院です。
自宅開業のメリット
・家賃不要、もしくは大幅に軽減
・通勤コストゼロ
・固定費の圧縮
・失敗リスクの最小化
注意すべきポイント
・用途地域の制限
・保健所への事前相談
・生活空間との分離
・家族の 同意と協力体制
これらをクリアできれば、
資金ゼロに最も近い開業スタイルとなります。
資金ゼロ開業で最も多い失敗パターン
ライバル記事では語られない“現場の失敗例”もお伝えします。
失敗例:
・いきなり広すぎる物件を借りる
・高額な最新機器をローンで購入
・広告に先行投資しすぎる
・融資額を「限度額いっぱい」借りてしまう
共通点は、
**「不安=お金で解決しようとすること」**です。
まとめ|資金ゼロでも整骨院開業は「戦略次第」で可能になる
完全な資金ゼロは難しい。
しかし、
・親の援助
・融資制度
・クラウドファンディング
・自宅開業
これらを組み合わせれば、現実的な選択肢は大きく広がります。
大切なのは、
「資金がないから無理」ではなく
**「どう組み立てれば可能か」**を考えることです。
株式会社リードメディカル 山崎紀之
接骨院・整骨院の開業支援を全国で実施。
集客・医療機器・融資までトータルでサポートしています。
接骨院を開業しようとするときに、よく出てくる言葉が「開業届」と「開設届」。
名前が似ているため、同じ書類だと思っている方も少なくありません。
ですが、実はこの2つ――提出先も目的もまったく違う書類なんです。
この記事では、接骨院を開設する際に必要な「開設届」と「開業届」の違い、
それぞれの提出先、必要な書類、注意点までをわかりやすく紹介します。
✅接骨院の「開設届」とは?どこに出すの?
接骨院の「開設届」とは、
柔道整復師が施術所を開くときに、保健所へ提出する届出書です。
これは、治療を行う場所としての安全性や設備の基準を確認するための手続きで、
提出先は開設する地域を管轄する保健所になります。
営業を始める前に提出し、保健所による確認や立入検査を経て、
「施術所開設届出済証」が交付されてから、正式に開業できます。
💡開設届と開業届の違い
よく混同されるのが「開業届」ですが、この2つは別のものです。
| 書類名 |
提出先 |
目的 |
タイミング |
| 開設届 |
保健所 |
治療施設としての届け出 |
開業前 |
| 開業届 |
税務署 |
個人事業主としての届け出 |
開業後1か月以内 |
つまり、
「治療を行うための届出(保健所)」と「事業を始めるための届出(税務署)」は、
それぞれ別ルートで必要ということです。
特に、保険請求(療養費の受領委任)を行う接骨院では、
開設届がなければ保険の取り扱いができません。注意が必要です。
📋開設届に必要な書類
保健所へ提出する際は、いくつかの添付資料が求められます。
地域によって多少異なりますが、一般的には以下のような書類を準備します。
-
柔道整復師免許証の写し
-
施術所の平面図(寸法入り)
-
建物の登記簿謄本または賃貸契約書
-
医療機器・備品の一覧
-
開設者の身分証明書(運転免許証・住民票など)
-
消防署の確認書類(必要な場合)
書類提出後、保健所の立入検査を経て、問題がなければ受理されます。
🕒開設届の提出タイミングと注意点
開設届は開設後10日以内に申請のが原則です。
審査から立入検査、証明書発行までに数日〜1週間程度かかることが多いため、
開業スケジュールを立てるときは、この期間も計算に入れておきましょう。
また、内装工事を始める前に保健所へ相談するのもおすすめです。
施術スペースや待合室、手洗い設備などが基準を満たしていないと、
やり直し工事になるケースも少なくありません。
🧾開設届を出した後に必要な手続き
保健所への開設届が済んだら、以下の手続きも忘れずに行いましょう。
-
地方厚生局へ「受領委任の届出」(保険請求を行う場合)
-
税務署へ「開業届」(事業主登録)
整骨院を開業したら1ヶ月以内に、納税をする地域(税務署)に「個人事業の開業届出・廃業届出等手続」を
提出しなければなりません。
インターネットで開業届を作れますので、
こちらを参考に作ってみてください。
開業freee
簡単な質問に答えるだけで、無料で作れます。
ただし、開業前から準備して作ろうと思ったら
屋号(院名)が必要になりますので、屋号が決まってから、
作成しましょう!
同時に青色申告承認申請書も同時に作れますので、
作っておきましょう!
こちらは、住居がある地域、または施術所がある地域を選べますが
ほとんどの先生方が住居がある地域に提出されます。
-
青色申告承認申請書の提出(節税対策)
この3つを済ませることで、
「治療ができる」「保険が使える」「経営ができる」
という3つの基盤が整います。
🩹まとめ
接骨院を開くためには、
似たような言葉ですが、目的も提出先も違います。
どちらか一方を忘れてしまうと、
保険請求ができなかったり、税務上のトラブルにつながったりするため、
正しい順番で確実に手続きを進めることが大切です。
「そろそろ自分の院を持ちたい」──そう思い始めた瞬間にまず突き当たるのが資金の壁です。
私はこれまで200院以上の立ち上げをサポートしてきましたが、やはり“数字”を知らずに計画を進めると、
途中で動けなくなる先生が少なくありません。この記事では、実際の開業資金の目安と資金調達の流れを、
現場の肌感覚も交えてお伝えします。
【1】開業資金の目安を押さえる
・相場:400万〜1,500万円
・「初期投資+運転資金3〜6か月分」で見ると650万〜1,750万円
・居抜き&機器最小なら500万前後で済むケースも
【2】費用を左右する4つの主要項目
1)物件取得費(敷金・礼金・保証金など)
2)内外装・電気配線・衛生設備
3)治療機器・レセコン・什器備品
4)広告宣伝費+開業後の運転資金
私は18坪テナントの新規内装を請け負った際、内装+設備だけで720万円かかりました。
逆に、知人が譲渡した居抜き物件では300万円弱でスタートできた例もあります。
同じ「18坪」でもここまで差が出るのがポイントです。
【3】3つのモデルケースでシミュレーション
A.最小スモールスタート 400〜800万円
ベッド2台/ワンオペ/中古機器中心
B.標準モデル 600〜1,200万円
ベッド4台/テナント内装フル/物療器機
C.ハイグレードモデル 1,000万円超
自費メニュー充実/最新機器/スタッフ複数
【4】資金調達のリアル
・日本政策金融公庫―無担保800万円、金利1%台の枠を活用
・地方自治体の創業助成金―開業後の家賃・設備の1/2を補助
・自己資金は総額の20〜30%用意できると融資審査がスムーズ(ほとんどの先生が100万~200万)
私の場合、自己資金300万円+公庫融資700万円で開業した先生は、初月黒字化まで4か月でした。
運転資金3か月分を口座に残しておいたことが奏功しました。
【5】よくある落とし穴と対策
・広告費ゼロで見込み客が来ない → 立ち上げ3か月はSNS広告+ポスティングをセット
・高額機器をフルローン → リース期間と償却年数を必ず突き合わせる
・家賃負担が高い → 売上の15%以内を目安に抑える
【6】開業前チェックリスト(保存版)
□ 物件候補は3件以上比較したか
□ 自己資金=総投資額の30%を確保したか
□ 運転資金3か月分が口座にあるか
□ 日本政策金融公庫の創業計画書をダウンロードしたか
(まとめ)
開業資金は「高い」よりも「内訳が見えない」ことが不安の正体です。
まずは数字を洗い出し、資金調達の選択肢を並べ、運転資金まで含めた計画表を作成しましょう。
数字がクリアになった瞬間、開業への道筋が一気に具体的に見えてきます。
接骨院の開業を目指している柔道整復師の先生から、「国家資格を取ったらすぐに開業できますか?」という質問をよくいただきます。
結論からお伝えすると、柔道整復師の免許だけでは、保険適用の接骨院は開業できません。
実は、免許取得後にも満たすべき要件がいくつかあるのです。
私自身、開業準備中に「こんな要件があったのか」と驚いた経験があります。
この記事では、これから開業を考えている先生方が同じ失敗をしないよう、
必要な資格・実務経験・届出について、実務に即した形で詳しく解説していきます。
接骨院開業の大前提:柔道整復師の国家資格
柔道整復師とは
接骨院(整骨院)を開業するには、柔道整復師という国家資格が絶対条件です。この資格がなければ、骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷といった施術を業として行うことはできません。
資格取得までの道のり
柔道整復師になるためには、次のステップを踏む必要があります:
-
養成施設での学習(3〜4年)
- 文部科学大臣指定の4年制大学
- 都道府県知事指定の専門学校(3年以上)
-
国家試験の合格
-
免許の登録
ここまでは多くの先生がご存知だと思います。しかし、問題はここからです。
保険診療を行うための「施術管理者」要件
接骨院を開業しても、保険適用の施術を行えなければ、経営は非常に厳しいのが現実です。保険診療を行うには、「施術管理者」としての要件を満たす必要があります。
2018年の制度改正が大きな転換点
平成30年(2018年)4月の制度改正により、施術管理者になるための要件が大幅に厳格化されました。それ以前は免許取得後すぐに開業できましたが、現在は違います。
必要な実務経験年数
2024年4月以降に施術管理者になる場合:
つまり、国家資格を取得してから最低でも3年間は、他の接骨院や整骨院,
もしくは整形外科で勤務する必要があります。「来年すぐに開業しよう」と考えていた新卒の先生には、少し厳しい現実かもしれません。
施術管理者研修の受講
実務経験だけでは不十分で、施術管理者研修(16時間以上)の受講と修了が義務付けられています。
研修の内容:
- 療養費の適正請求
- 接骨院の運営管理
- 関係法規の理解
- 職業倫理
この研修は、各都道府県の柔道整復師会などが実施しています。修了証がないと、保険請求の受領委任契約ができません。
開業時に必要な届出と手続き
資格と経験を満たしても、行政手続きを怠ると営業できません。
1. 保健所への開設届
提出先: 施術所所在地を管轄する保健所
期限: 開設後10日以内
必要書類:
- 施術所開設届
- 施術所の平面図
- 柔道整復師免許証の写し
- 賃貸借契約書の写し(賃貸の場合)
構造設備基準も確認が必要です:
- 施術室の面積(6.6㎡以上)
- 待合室の設置
- 消毒設備
2. 受領委任契約の申請
提出先: 地方厚生局
必要なもの:
- 受領委任の取扱いに関する申出書
- 施術管理者の実務経験証明書
- 施術管理者研修修了証の写し
- 開設届出済証明書
この契約がないと、患者さんから療養費の一部負担金だけを受け取ることができません。
3. その他の届出
税務署:
- 個人事業の開業届
- 青色申告承認申請書(節税のため推奨)
都道府県税事務所:
年金事務所(従業員を雇う場合):
開業までの現実的なスケジュール
実際のタイムラインを見てみましょう。
国家資格取得: 2022年3月(24歳)
↓
実務経験開始: 2022年4月〜
- 接骨院に勤務
- 施術技術を磨く
- 経営の実態を学ぶ
↓
施術管理者研修受講: 2025年1月(実務3年目)
↓
実務経験満了: 2025年3月(3年経過)
↓
開業準備本格化: 2025年4月〜
- 物件探し
- 事業計画作成
- 資金調達
↓
開業: 2025年10月(27歳)
このように、国家資格取得から開業まで最短でも3年半程度かかります。
開業準備でよくある失敗と対策
失敗例1:実務経験のカウントミス
「だいたい、1~2年働いた・・・」
で、計算される方がいます。
実際に勤務した期間を把握しましょう!
また実務経験証明書を発行してもらえるか雇用主と相談しておくことが必用です。
対策: 実務経験が2年半を過ぎたあたりで、早めに研修スケジュールを確認し、予約を入れる。
失敗例3:物件の構造基準を満たしていない
気に入った物件を契約した後で、施術室の面積が基準を満たしていないことが判明したケースです。
対策: 物件契約前に、保健所に必ず相談に行く。図面を持参して、開設可能か事前確認する。
自費診療のみで開業する選択肢
「3年も待てない」という先生もいるかもしれません。その場合、自費診療のみの施術所として開業する道もあります。
メリット
- 実務経験不要で開業可能
- 施術内容の自由度が高い
- 保険請求の事務負担がない
デメリット
- 患者さんの負担が大きい
- 集客の難易度が高い
- 安定した収益を得るまで時間がかかる
ただし、実務経験の年数の加算にはならないので、注意しましょう!
開業成功のために準備すべきこと
資格と要件をクリアしたら、次は実際の開業準備です。
1. 技術力の向上
実務経験の3年間は、ただ時間を過ごすのではなく、施術技術を徹底的に磨く期間と捉えてください。
- 様々な症状の患者さんを経験する
- 先輩の施術を観察して学ぶ
- 研修会やセミナーに参加する
- 患者さんとのコミュニケーション力を磨く
2. 経営知識の習得
施術ができても、経営ができなければ開業は成功しません。
- 勤務先の経営手法を観察する
- 会計・税務の基礎知識を学ぶ
- マーケティングの勉強をする
- 開業セミナーに参加する
3. 資金計画
開業には600万〜1000万円程度の初期投資が必要です。
現実的には自己資金100万円、それ以外は日本政策金融公庫から借り入れをします。
主な費用:
- 物件取得費(敷金・礼金・保証金)
- 内装工事費
- 医療機器・備品購入費
- 広告宣伝費
- 運転資金(4ヶ月分程度)
実務経験の期間中に、計画的に開業資金を貯めることをお勧めします。
4. 差別化戦略の構築
近年、接骨院の競争は激化しています。「なぜあなたの接骨院を選ぶべきか」を明確にしましょう。
- 特定の症状に特化する(スポーツ障害、交通事故、産後ケアなど)
- 独自の施術メソッドを確立する
- ターゲット患者層を明確にする
まとめ:計画的な準備が成功への近道
接骨院の開業に必要な資格と要件をまとめると:
✓ 柔道整復師の国家資格(必須)
✓ 3年以上の実務経験(保険診療を行う場合)
✓ 施術管理者研修の修了(保険診療を行う場合)
✓ 各種行政手続き(開設届、受領委任契約など)
「免許を取ったらすぐ開業」というイメージを持っていた先生には、ハードルが高く感じられるかもしれません。
しかし、この3年間の実務経験期間こそが、開業後の成功を左右する重要な準備期間なのです。
焦らず、一つひとつの要件を確実にクリアしながら、技術・経営知識・資金を蓄積していく。
そうすれば、開業後も患者さんに信頼される接骨院を運営できるはずです。
今日から、具体的な開業計画を立て始めてみませんか?