2025年10月23日
接骨院開業に必要な資格とは?柔道整復師が知っておくべき実務経験と届出の全知識
ブログ
接骨院の開業を目指している柔道整復師の先生から、「国家資格を取ったらすぐに開業できますか?」という質問をよくいただきます。
結論からお伝えすると、柔道整復師の免許だけでは、保険適用の接骨院は開業できません。
実は、免許取得後にも満たすべき要件がいくつかあるのです。
私自身、開業準備中に「こんな要件があったのか」と驚いた経験があります。
この記事では、これから開業を考えている先生方が同じ失敗をしないよう、
必要な資格・実務経験・届出について、実務に即した形で詳しく解説していきます。
接骨院開業の大前提:柔道整復師の国家資格
柔道整復師とは
接骨院(整骨院)を開業するには、柔道整復師という国家資格が絶対条件です。この資格がなければ、骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷といった施術を業として行うことはできません。
資格取得までの道のり
柔道整復師になるためには、次のステップを踏む必要があります:
-
養成施設での学習(3〜4年)
- 文部科学大臣指定の4年制大学
- 都道府県知事指定の専門学校(3年以上)
-
国家試験の合格
- 毎年3月に実施
- 合格率は近年60〜70%程度
-
免許の登録
- 試験合格後、厚生労働省への登録手続きが必要
ここまでは多くの先生がご存知だと思います。しかし、問題はここからです。
保険診療を行うための「施術管理者」要件
接骨院を開業しても、保険適用の施術を行えなければ、経営は非常に厳しいのが現実です。保険診療を行うには、「施術管理者」としての要件を満たす必要があります。
2018年の制度改正が大きな転換点
平成30年(2018年)4月の制度改正により、施術管理者になるための要件が大幅に厳格化されました。それ以前は免許取得後すぐに開業できましたが、現在は違います。
必要な実務経験年数
2024年4月以降に施術管理者になる場合:
- 実務経験3年以上が必須
つまり、国家資格を取得してから最低でも3年間は、他の接骨院や整骨院,
もしくは整形外科で勤務する必要があります。「来年すぐに開業しよう」と考えていた新卒の先生には、少し厳しい現実かもしれません。
施術管理者研修の受講
実務経験だけでは不十分で、施術管理者研修(16時間以上)の受講と修了が義務付けられています。
研修の内容:
- 療養費の適正請求
- 接骨院の運営管理
- 関係法規の理解
- 職業倫理
この研修は、各都道府県の柔道整復師会などが実施しています。修了証がないと、保険請求の受領委任契約ができません。
開業時に必要な届出と手続き
資格と経験を満たしても、行政手続きを怠ると営業できません。
1. 保健所への開設届
提出先: 施術所所在地を管轄する保健所
期限: 開設後10日以内
必要書類:
- 施術所開設届
- 施術所の平面図
- 柔道整復師免許証の写し
- 賃貸借契約書の写し(賃貸の場合)
構造設備基準も確認が必要です:
- 施術室の面積(6.6㎡以上)
- 待合室の設置
- 消毒設備
2. 受領委任契約の申請
提出先: 地方厚生局
必要なもの:
- 受領委任の取扱いに関する申出書
- 施術管理者の実務経験証明書
- 施術管理者研修修了証の写し
- 開設届出済証明書
この契約がないと、患者さんから療養費の一部負担金だけを受け取ることができません。
3. その他の届出
税務署:
- 個人事業の開業届
- 青色申告承認申請書(節税のため推奨)
都道府県税事務所:
- 個人事業税の開業届
年金事務所(従業員を雇う場合):
- 社会保険の新規適用届
開業までの現実的なスケジュール
実際のタイムラインを見てみましょう。
国家資格取得: 2022年3月(24歳)
↓
実務経験開始: 2022年4月〜
- 接骨院に勤務
- 施術技術を磨く
- 経営の実態を学ぶ
↓
施術管理者研修受講: 2025年1月(実務3年目)
↓
実務経験満了: 2025年3月(3年経過)
↓
開業準備本格化: 2025年4月〜 - 物件探し
- 事業計画作成
- 資金調達
↓
開業: 2025年10月(27歳)
このように、国家資格取得から開業まで最短でも3年半程度かかります。
開業準備でよくある失敗と対策
失敗例1:実務経験のカウントミス
「だいたい、1~2年働いた・・・」
で、計算される方がいます。
実際に勤務した期間を把握しましょう!
また実務経験証明書を発行してもらえるか雇用主と相談しておくことが必用です。
対策: 実務経験が2年半を過ぎたあたりで、早めに研修スケジュールを確認し、予約を入れる。
失敗例3:物件の構造基準を満たしていない
気に入った物件を契約した後で、施術室の面積が基準を満たしていないことが判明したケースです。
対策: 物件契約前に、保健所に必ず相談に行く。図面を持参して、開設可能か事前確認する。
自費診療のみで開業する選択肢
「3年も待てない」という先生もいるかもしれません。その場合、自費診療のみの施術所として開業する道もあります。
メリット
- 実務経験不要で開業可能
- 施術内容の自由度が高い
- 保険請求の事務負担がない
デメリット
- 患者さんの負担が大きい
- 集客の難易度が高い
- 安定した収益を得るまで時間がかかる
ただし、実務経験の年数の加算にはならないので、注意しましょう!
開業成功のために準備すべきこと
資格と要件をクリアしたら、次は実際の開業準備です。
1. 技術力の向上
実務経験の3年間は、ただ時間を過ごすのではなく、施術技術を徹底的に磨く期間と捉えてください。
- 様々な症状の患者さんを経験する
- 先輩の施術を観察して学ぶ
- 研修会やセミナーに参加する
- 患者さんとのコミュニケーション力を磨く
2. 経営知識の習得
施術ができても、経営ができなければ開業は成功しません。
- 勤務先の経営手法を観察する
- 会計・税務の基礎知識を学ぶ
- マーケティングの勉強をする
- 開業セミナーに参加する
3. 資金計画
開業には600万〜1000万円程度の初期投資が必要です。
現実的には自己資金100万円、それ以外は日本政策金融公庫から借り入れをします。
主な費用:
- 物件取得費(敷金・礼金・保証金)
- 内装工事費
- 医療機器・備品購入費
- 広告宣伝費
- 運転資金(4ヶ月分程度)
実務経験の期間中に、計画的に開業資金を貯めることをお勧めします。
4. 差別化戦略の構築
近年、接骨院の競争は激化しています。「なぜあなたの接骨院を選ぶべきか」を明確にしましょう。
- 特定の症状に特化する(スポーツ障害、交通事故、産後ケアなど)
- 独自の施術メソッドを確立する
- ターゲット患者層を明確にする
まとめ:計画的な準備が成功への近道
接骨院の開業に必要な資格と要件をまとめると:
✓ 柔道整復師の国家資格(必須)
✓ 3年以上の実務経験(保険診療を行う場合)
✓ 施術管理者研修の修了(保険診療を行う場合)
✓ 各種行政手続き(開設届、受領委任契約など)
「免許を取ったらすぐ開業」というイメージを持っていた先生には、ハードルが高く感じられるかもしれません。
しかし、この3年間の実務経験期間こそが、開業後の成功を左右する重要な準備期間なのです。
焦らず、一つひとつの要件を確実にクリアしながら、技術・経営知識・資金を蓄積していく。
そうすれば、開業後も患者さんに信頼される接骨院を運営できるはずです。
今日から、具体的な開業計画を立て始めてみませんか?
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